• 「飛行船」は文芸を愛する人たちが集う徳島県の同人誌です

ご挨拶

 平成19年(2007)5月に創刊した飛行船は、15年を経過した今、149頁の冊子は192頁に成長した。8名だった会員は12名になった。

 同人雑誌イコール老人雑誌と揶揄される昨今の世相ではあるが、わが飛行船は、平均年齢60歳を保っている。昭和9年生まれの主宰竹内が頑張って引き上げているが、二十代一人、四十代一人と、これからの期待株も在籍している。当初からの会員は三名になっているが、適当に穏やかに自然な新陳代謝を行いつつ、常に10名余の人数を保ち、飛行船の信条である「書き続ける」ことを、みんな律儀に守っている。

 当初、竹内一人が担ってきた雑用も、編集委員制度を採り入れ、5名の編集委員が適宜編集会議を持って、相談しながらの運営はまことに塩梅がいい。いろいろな意見や発想を取り入れながら和やかにうまく経営が運んでいると言える。年二回の発行が一回になったことで、経済的には余裕ができたが、会員が顔を合わせ、会話し、心を通わせる機会が少なくなったのは残念である。それに追い打ちを掛けたのがコロナ禍。これはなかなかしぶとく居座り、会合を企画しては流れ、計画しては流れで、はなはだ悔しい思いではある。

 作家としての本命は「書くこと」ではあるが、書くためには刺激がいる。刺激は自然からも書物からも得られるが、人との触れ合いの中で生まれることも多々ある。社会的な触れ合いがもっと欲しいと望むところである。リモートで、という手もあるが、これ以上無機質にはなりたくない。肌のぬくもりを感じるお付き合いがしたい。会員同士は作品を通してのみのお付き合いであるが、もっと親しくなれる機会を何とか作りたいものだ。

 世情はウクライナ問題等で非常に厳しい。対岸の火事と傍観していても、徐々に悪影響は襲ってくる。やはり平和であって欲しい。戦争からは破壊以外何も生まれない。巨額の援助資金はうたかたにしか過ぎない。律儀に真面目にこつこつ努力することで、ささやかに備蓄をしている庶民の愉しみを奪わないで欲しい。我々にできること、それは今まで通りの日常をスムーズに繰り返すことである。その繰り返しの中から、素敵なアイデアが生まれ、発想の転換が出来、傑作に結びつく発端となるかもしれない。

 同人雑誌協会とか、同人雑誌会議とか全国的な組織もあり、交流の場があり、仲間意識もある。お互いが刺激し合い、交流し、文学への道を歩く姿勢には崇高なものすら感じる。さまざまな賞も溢れている。応募する機会はたくさんある。飛行船を修業の場として、研鑚して欲しい。

 こんな「飛行船」にご賛同いただければ、作品をお送り下さい。短いもので結構です。あなたの作品で、「飛行船」はより豊かになって飛び続けることでしょう。

  令和4年(2022年)4月    
    同人誌 飛行船 主宰  竹内 菊世